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結婚して狭いマンションに居を構えると、体を置く場所が定まったという感じがした。しかし心には大きな穴があいたようで、隙間風が吹き抜けて空虚感が漂う。二階へ上がるにも苦労する体は死の恐怖を呼び起こすだけでなく、階段の多い都会での行動をも制限する。そして、悪い連想が次の悪い連想を生み出していく。私の心がいつか港に入り、錨を下ろせるのだろうかという不安に苛まれるのである。
余生という観念も「生きていたい」という欲望の前では時々無力になり、悩みは尽きない。何故なら家内が妊娠したからである。子供ができれば、どんなことがあっても生きていかなければならないという思いが駆け抜けた。しかし、個人的な都合で1年間勤めた夙川学院短期大学を退職してしまったので、経済的な問題が浮上した。そして2年間の非常勤講師生活の後、皇學館大學の専任講師の職を得るのである。
これ以後は「プロフィール」、「趣味と特技」を読んでいただければ、ご理解いただけると思っている。これだけ長く「心の軌跡」を書いてきたのは、還暦を間近に控えて生き様の検証と再構築が必要であると痛感するからである。ここまで記してきたように、私のこれまでの足跡は節目、節目で多くの方々から助けていただいたり、助言を受けたり、ご指導を願ったことで色付けされているので、現在の自分が存在するのはその方々のお陰であると常日頃思っている。私がしたのは編入試験を受けるという決心だけであった。それも確たる信念があってのことではなかった。そこで、お世話になった方々に直接御礼できないとしても、私自身が精一杯生きることでその御礼とし、お世話になったという気持ちを忘れず、学生に、周りの人々に自分にできることをしたいと思い続けてきた。そして今、それを再確認しなければならないという思いを新たにしている。そして、「心の軌跡」をホーム・ページに掲載させていただいて私の内面を公にすることによって、ややもすると時の流れに埋没しそうな弱い自己に一つの枠をはめ、感謝の気持ちを行動の根底に据えているか否かを今後は問い質していきたい。 何故なら、激しい運動はできないが、体がかなり動くようになるにつれて、心にも余裕が生まれつつあるからである。自分の生き様に少しは納得できるようになれば、心の港へは少しずつ近づいていると思われる。
ここまで読んでいただいた方には深甚なる感謝を申し上げる。少しはおもしろいと思っていただけただろうか。省略した部分を補えば、まだまだおもしろい話が多くある。それだけ普通の人なら経験しない色々なことを経験しているわけだが、「事実は小説より奇なり」を地でいく感がある。つまり、私の「心の軌跡」では振幅が大きく、起伏が激しいことを物語っているのである。いつか、皐盆栽やバラの花を眺め、ビールを飲みながら、話に花を咲かせあえる珍客の到来を待ち望んでいる。
長時間お読みいただき有り難うございました。以上は1999年に書かれたたことにご留意下さい。
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